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052019-07

Dynamic Mode Decomposition ~データから時空間ダイナミクスを抽出する方法~

はじめに

電磁場や流体運動のように,場の量の時空間発展として定式化される物理現象は日常生活において馴染み深いものである.これらの現象には基礎方程式が存在する一方で,脳波やSNSの情報拡散といった現象には現時点で確立された基礎方程式が存在しないため,観測データに基づいた議論が行われている.基礎方程式が存在する対象では,主要なモードに着目することでおおまかな情報を捉えることが可能である.Dynamic Mode Decomposition(DMD)とは, 基礎方程式が与えられていない対象に対して観測データに基づいたモード展開を行う解析手法である.DMDを使用することで,対象とする系の将来の挙動の近似を得ることや,主要なモードの特徴を把握することが可能となる.

理論

対象としている時空間発展する場の量をとする.ここでは空間座標では時刻を表すものとする.ここでは簡単のため1次元の空間座標を対象とするが,高次の空間においても同様の結果が得られる.空間座標と時刻をそれぞれ,と離散化すると,場の量は行列に置き換えられる.ただし,を成分に持つ次元ベクトルである.

空間と時間の両方が離散化された状態ベクトルの時間発展を近似する,となる時不変な線形写像を構成することを考える.1番目から番目までのを並べた行列をとすると,この行列は線形写像により と表される.番目のものについては1番目から番目までのものの線形結合により

で表されるものとする.ただしは残差ベクトルである.行列の特異値分解により

を得る.ここで,,,はそれぞれ,,の複素行列である.を行列の階数よりも小さくできるときは特異値分解が十分な近似を与えるとみなすことができる.行列に対してという関係が成り立つことからの近似式を用いると

を与える行列が存在する.ただし,成分の単位ベクトルである.定義より,を成分に持つ行列であるため,これを推定することでの近似式の係数を推定することができる.行列を直接推定するかわりに

を推定すれば良いことが知られている.行列の固有値と固有ベクトルの組をとすると動的モードが

として得られる.この動的モードとにより任意の時刻におけるの動的モード展開が

として与えられる.個の動的モードを並べた行列を導入すると,

となる.の初期値であるが,行列の一般化逆行列により,として求められる.以上が動的モード分解による場の量の時空間発展の近似である.

実施手順

1. データの空間分解能, 時間刻み, 空間方向の格子点総数, 時間軸方向の総点数を決める.これにより,観測データは個の次元ベクトルの組で与えられる.

2. 1で得られた個のベクトルを要素として持つ行列を構成する.行列から部分行列を抽出する.

3. 部分行列の特異値分解を行い, 行列, , を求める.ここで,は行列の共役転置を表す.

4. 3で得られた行列から正方行列を求める.この行列の固有値問題を解くことで固有値と固有ベクトルが得られる.

5. 各固有ベクトルに対してを作用させることで固有モードを得る.これらを並べて行列を得る.

6. 行列の擬似逆行列と観測データの初期値ベクトルからを求める.

7. 任意の時刻における時空間ダイナミクスは固有モード展開により近似される.ただしである.

実施例

場の量の時空間発展が

で与えられるときのDMDを実施する.における実部と虚部のスナップショットを以下に示す.

snapshots

これに対してとしてDMDを実施すると dynamicmodes が動的モードとして求められる.これらの動的モードに対応する固有値はとなり,第1モードの固有値の実部は数値誤差とみなせるため0に置き換えることができる.これにより,DMDは定常振動する元の時空間ダイナミクスを捉えているといえる.

関連する話題

DMDは流体力学[2]や気象物理学の分野で開発されたデータ解析手法ではあるものの,その後は様々な分野に応用されている.たとえば,脳科学の分野では脳波からてんかんを検出することに応用されている[3].また,近年はDMDを用いた投資戦略も提案されており,株式市場のインデックスをアウトパフォームしたことが報告されている[4].DMDの基礎理論や,より発展的な内容については文献[1]と[5]に詳しく記載されている.

参考文献

[1] J. N. Kutz, Data-driven modeling & scientific computation, Oxford University Press, 2013

[2] P. S. Schmid, Dynamic mode decomposition of numerical and experimental data, J. Fluid. Mech. 656, 5-28 (2010)

[3] M. S. J. Solaija, et. al., Dynamic mode decomposition based epileptic seizure detection from scalp EEG, IEEE Access 6, 38683-38692 (2018)

[4] J. Mann and J. N. Kutz, Dynamic mode decomposition for financial trading strategies, Quant. Finan. 16, 1643-1655 (2016)

[5] J. N. Kutz, et. al., Dynamic mode decomposition, SIAM, 2017

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