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052019-07

ヘッジファンドは勝てるのか?~2007年から2017年の間のヘッジファンドのパフォーマンスをくらべてみました~

はじめに

投資に有利な情報が存在すると、投資家はそれを利用した投資行動をとることで利益を得ることができる。そのような有益な情報は瞬時に広がるため、投資家はこのような情報の非対称性を利用して利益を得ることができないという考え方は効率的市場仮説として知られている。そのため、株式市場インデックスに代表されるような市場平均リターンを上回ることができないというのが、効率的市場仮説の立場から見た投資行動である。 一方で、現実の市場は効率的ではないことが数々の実証分析により方向されており、情報の非対称性を利用して利益獲得を目指すファンドが数多く存在する。このような機関投資家が運用するファンドの一つにヘッジファンドがある。これは、預かり資産を株式や債権などの現物に加え、金融派生商品や小麦やコーヒー豆などの商品先物市場等に分散投資することで利益獲得を狙う投資手法である。分散投資を行うことでリスクを回避することをリスクヘッジといい、これがヘッジファンドの語源になっている。 ヘッジファンドは1990年代に高い運用成績を残していたが、2009年の金融危機以降の成績は芳しくないと言われている。ここでは、金融危機の前後での代表的なヘッジファンドの手法の成績を評価した実証研究を紹介する。

評価したヘッジファンドの手法一覧

ヘッジファンドはリスクを分散させるために複数の金融商品に投資する。投資対象としては、株式や債権などの現物金融商品、コールオプションやプットオプションといった金融派生商品、小麦やコーヒー豆といった現物先物市場や各種インデックスの金融先物市場が挙げられる。以下では、これらの投資対象をもとに構成されるヘッジファンドの投資手法の中でも代表的なものを紹介する。

転換証券アービトラージ戦略 (Convertible Arbitrage)

転換社債、転換社債付優先株、ワラント債などを購入して保有する一方で、同社の株式を空売りすることでリスクヘッジする戦略。

新興市場戦略 (Emerging Markets)

新興株式市場や開発途上国の株式市場に上場する企業は大幅な成長が期待できるため、これらの市場に積極的に投資する戦略。

株式市場ニュートラル戦略 (Equity Market Neutral)

市場平均を上回るリターンが出ると期待される銘柄を保有する一方で、下回るリターンが出ると予想される銘柄を保有する株式と同額だけ空売りする戦略。

イベント・ドリブン戦略 (Event Driven)

上場企業の合併、吸収、精算、倒産、スピンアウトといった、企業活動の特別なイベントからリターンを得る投資戦略。

債権アービトラージ戦略 (Fixed Income Arbitrage)

適正価格よりも割安に評価されている債権を保有すると同時に、割高に評価されている債権を空売りする投資戦略。

グローバル・マクロ戦略 (Global Macro)

グローバルなマクロ経済動向を観察し、その変化にいち早く反応する投資戦略。

ロング・ショート戦略 (Long/Short Equity)

適正価格よりも割安に評価されている株式を保有すると同時に、割高に評価されている株式を空売りする投資戦略。

マネージド・フューチャーズ戦略 (Mnaged Futtures)

世界中の先物市場への分散投資を行う投資戦略。通貨や金利といった金融先物市場だけではなく、小麦やコーヒー豆のような商品先物市場へも投資する。

マルチ・ストラテジー戦略 (Multi Strategy)

複数の投資戦略に分散投資する投資戦略。

性能評価指標

それぞれの手法の評価は、シャープ・レシオ、ソルティノ・レシオ、アップサイドポテンシャル・レシオによって行われた。ここでは、これらの性能評価指標を紹介する。

シャープ・レシオ

シャープ・レシオはリスク全体に対するリターンの比を表す指標である。ここでのリスクはリターンの標準偏差で評価するため、平均リターンよりも大きなリターンもリスクに含まれることに注意する。ヘッジファンドのリターンを、リスクフリーリターンを、ヘッジファンドのリターンの標準偏差をとするとシャープ・レシオ

で与えられる。ここでは平均操作を表す。

ソルティノ・レシオ

シャープ・レシオは平均リターンからの上昇リスクと下降リスクの両方を使用しているが、投資家は下降リスクに対する関心の方を強くもつと考えられる。これを反映してシャープ・レシオを改良したものがソルティノ・レシオである。ヘッジファンドのリターンを、最小許容リターンをMARとすると、ソルティノ・レシオ

で与えられる。

アップサイドポテンシャル・レシオ

ソルティノ・レシオが下降リスクにもとづいた評価指標である一方で、アップサイドポテンシャル・レシオは下降リスクに対する上昇リターンを評価する指標である。アップサイドポテンシャル・レシオ

で与えられる。

実証分析

ヘッジファンドの投資手法を分析するため、以下のオンラインデータベースを利用した。

  • Barclay hedge
  • Eurekahedge
  • Hedge Fund Research
  • Hedge Index

詳細は下記URLにも記載されている。

https://sophisticatedinvestor.com/review-online-hedge-fund-database-providers-in-2019/

2007年から2017年までの累積リターンを比較した図を示す。ベンチマークとしてS&P500を使用している。株式市場ニュートラル戦略とロング・ショート戦略を除いては、ヘッジファンドの投資戦略はS&P500をアウトパフォームしていることが確認できる。評価期間を金融危機(2009年)の前後で分けて同様の評価を行ったものが原論文に掲載されている。

image

投資期間におけるシャープ・レシオ、ソルティノ・レシオ、アップサイドポテンシャル・レシオを順位付けしたものが下表である。シャープ・レシオとソルティノ・レシオは似た順位付けを行うことが確認できる。

image

おわりに

ヘッジファンドは市場平均を上回ることを目的に投資を行っているが、2007年から2017年においては実際にそのようなヘッジファンドの投資手法が存在していたことが実証分析により明らかにされた。そのため、個人投資家であっても投資手法を上手く開発することによって市場平均を上回ることができると期待される。

参考文献

N. Metzger and V. Shenai, Hedge Fund Performance during and after the Crisis: A Comparative Analysis of Strategies 2007-2017, Int. J. Financial Stud. 2019, 7, 15. URL: https://www.mdpi.com/2227-7072/7/1/15

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