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262019-05

金融商品や投資戦略の評価に使われている各種指標の紹介

金融商品や投資戦略と評価指標

銀行や証券会社から紹介される投資信託のパンフレットを眺めていると、リターンやリスクといった単語や、累積リターンの推移のグラフといった専門的な内容が記載されている。株式や債権といった金融商品は日々の経済活動を反映してランダムに変動するため、統計的な評価指標が提案され使用されてきたという経緯がある。実際にファンドが公開している投資信託の運用レポートの中でも、横軸がリスクで縦軸がリターンのグラフ内で株式や債権とともに投資信託の位置付けが記載されている。

参考: https://www.rheos.jp/toushin/pdf/toshin-full-report20190426.pdf

一方で、このような統計的な評価指標は日常生活で使われることはなく一般には馴染みがないため、投資入門者にとってはこれらの評価指標を読み解くことはハードルともなり得る。ここでは、数ある評価指標の中でも特に広く使用されているものを紹介する。

リターンの推移 -資産規模によらない評価が可能-

金融資産の運用において、元本がどれだけ増えたか(もしくは減ったか)が多くの投資家にとっての最大の関心事である。金融商品や投資戦略を評価する際には、基準時点から現時点までの増減が用いられている。この増減のことをリターンという。投資戦略執行中の期における資産運用額をとすると、この戦略のリターンは

で求められる。仮に試算運用額を100倍にした場合のリターンは

となることから、リターンは資産運用額の規模によらないことがわかる。これにより、リターンに基づいた評価指標を使うことで資産運用規模によらない評価を行うことができるようになる。横軸を期間、縦軸をリターンとしたグラフを描くことで、リターンの時間的推移を可視化することができる。

return series

グラフから、リターンは正と負の値をとり不規則に変動することがわかる。

累積リターンの推移 -運用開始時点から現時点までの増減を評価-

リターンの推移を可視化することで、各期間ごとのリターンは正と負の両方の値をとり不規則に変動することが確認された。このリターンに基づいて、運用開始時期から現時点までのトータルの増減を算出したものが累積リターンである。運用開始時期から現時点までの累積リターン

をグラフに描くことで期に保有していた資産が期にはどれだけ増えた(減った)かを可視化することができる。上で描いたリターンの推移に対応する累積リターンの推移は

cumulative return series

となる。リターンの推移からは確認できなかったが、累積リターンには上昇トレンドと下降トレンドが存在することが確認できる。このように、累積リターンはトレンドの有無を確認するのに有用である。

リターンのヒストグラム・確率密度 -リターンのばらつき度合いを可視化-

資産運用額のリターンはランダムに変動しているため、リターンの値がどのように分布しているかといった情報も有用である。リターンの分布の度合いの可視化方法として、ヒストグラム(度数分布)と確率分布(または確率密度)が用いられている。これらを可視化したものが

hist pdf

である。棒グラフで表示されているものがヒストグラムであり、実践で表示されているものが確率密度である。ヒストグラムは、指定された数値幅にリターンがカウントされる数の分布であり、確率密度は指定された数値幅におけるリターンが生じる確率である。

平均・分散 -最も広く使用されている指標-

金融商品や投資戦略が平均的にどれぐらいのリターンを上げられているかは頻繁に使用される指標である。これは平均リターンや期待リターンと呼ばれ、リターンの確率密度の期待値として計算される。実用上は

で計算されることが多い。リターンの平均と同様に分散や標準偏差も金融商品や投資戦略の評価指標として使用されることが多い。これらは平均リターンからのばらつきを表しており、特にリターンの標準偏差はリスクとも呼ばれている。分散や標準偏差も確率密度から求められるが、実用上は

で計算されることが多い。リターンとリスクの関係をグラフにすることで、金融商品がどのような性質のものなのか(たとえば、リスクをとってでも大きなリターンをとるのか、また、極力リスクを抑えるのか等)を可視化することができる。投資信託の運用レポートを見ると、このグラフが用いられていることが確認できる。

シャープ・レシオ -リターンとリスクの比を数値化-

大きな平均リターンが得られる金融商品や投資戦略であったとしても、リスク、すなわちばらつきが大きい場合には一時的に資産を大幅に減らす可能性がある。一般的に、投資家は資産の減少を好ましくないものと考えているため、リターンとリスクの両方を考慮した投資戦略の評価が必要である。そのような指標として、シャープ・レシオが用いられている。無リスク金利をとすると、シャープ・レシオは

で求められる。無リスク金利としては、国債の長期金利が使用されることが多い。シャープ・レシオを用いることで、グラフとしてプロットしていたリターンとリスクの関係を数値として比較することができるようになる。

最大ドローダウン -最大下落幅を定量化-

運用期間における資産の最大下落率を、最大ドローダウンという。シャープ・レシオが良好な投資戦略であっても、最大ドローダウンが大きければ一時的に保有資産を大幅み目減りさせてしまうため、投資家にかかる心理的負担は非常に大きい。そのため、リスクを抑えること同様に最大ドローダウンを抑えることも重要だとされている。

バリュー・アット・リスク -損失の度合いを統計的に定量化-

バリュー・アット・リスクは統計的に損失のリスクを評価する指標である。執行した投資戦略の最大損失がVaR以下となる確率がであるとは、

であることを指す。左辺の確率を計算するためには、リターンの確率密度を求める必要がある。実際、リターンの確率密度関数がと推定されたときは

という関係が成り立つ。VaRを用いることで、投資家が許容できる損失を定量的に評価することができるようになる。

おわりに

ここで紹介した各種評価指標の説明によって、投資信託等の金融商品の説明資料は読みとけるようになることが期待される。今後は機関投資家が用いている投資戦略の性能に対するこれらの評価指標を実際に測定していく。

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